禁断の吐き方に騒然! 片岡凜出演の「リエゾン」が浮き彫りにした「痩せ姫」フィクションの魅力と現実の闇
とはいえ、当事者及び元・当事者からは朱里の葛藤に共感する声も出ていたし、精神科医が「大事なポイント」を抑えていると評価しているのも見かけた。それこそ「寛解」中の人が「同じ病棟にいた、今は空に行った子たちのことも思い出してしまう」とつぶやいていたり、朱里のダイエットアカウントが痩せれば痩せるほどフォロワー数を増やしていくことにリアリティーを感じていた人も。ちなみに、物語の最後ではそのダイエットアカではないアカウントで友達との楽しそうな4ショット写真が投稿される。
ほかには、友達が拒食症になったとき、何もできなかったことを悔やむような書き込みもあった。こうしたドラマには、筆者のように痩せ姫を偏愛する立場ではなくても、さまざまな人が心を揺さぶられるものなのだ。
それは朱里役に起用された片岡凜が、好演していたからでもある。
キャリアはまだ半年の19歳だが、淋しげな顔立ちを活かした説得力のある芝居をしていた。どこかうつろな目つきだったり、半開きの口元だったり、自信のなさそうな振る舞いだったり。そんな少女が痩せたことを褒められたり、そのおかげで友達ができたりすることで、一瞬、満ち足りた笑顔を見せる。この静かなメリハリが絶妙だったのだ。
なお、原作の朱里は156センチで41キロだが、ドラマの朱里は162センチで42キロ前後という設定だ。これは、片岡の身長が162センチで、体重もそれくらいに見えるからだろう。
役作りで少し絞ったという話も聞こえてきた。痩せ姫を演じるための減量といえば、映画「クワイエットルームにようこそ」の蒼井優が有名。160センチ43キロから、36キロまで落とした。そこまで過激なものではなかったようだが、片岡の女優魂も評価したい。
理解者となる友人を演じた鈴木梨央もよかった。腕に火傷のあとがあることから、朱里の闇にも気づき、寄り添おうとする役だ。鈴木は子役出身で、映画「僕だけがいない街」では母親に虐待される小学生を好演していた。成長した子役という存在自体がどこか闇を感じさせたりもするので、ハマっていたといえる。
また、主人公の医師役は山崎育三郎。妻の安倍なつみもモーニング娘。時代に激痩せと激太りで騒がれ、当時は病的な精神状態だったことものちに明かしている。この回での芝居について、山崎が安倍に何か助言を求めたりしたのだろうかと、なっちファンとしては妄想してしまった。
それはさておき、片岡は治療を拒む頑なさや、過食嘔吐の沼にハマっていく不安定さなどもまずまず上手く表現していた。痩せることで自信を得られるものの、その代償も負うという、キラキラとドロドロとが混在する痩せ姫の世界。それを演じるには、かなりの適役だったのだろう。
ただ、痩せ姫を描くフィクションは両刃の剣だ。そのキラキラとした部分に惹かれ、あえて病気に近づこうとする人も確実にいる。